KIDS & BABY

COLUMN

【無痛分娩編】産婦人科専門医ママかおりさんに聞く出産のコツ

【無痛分娩編】産婦人科専門医ママかおりさんに聞く出産のコツ
KAORI'S MAMA LIFE Vol.3

産婦人科専門医ママかおりさんに聞く出産のコツ【無痛分娩編】

3回にわたり「出産」について教えていただく、婦人産科医ママかおりさんの連載。

 

第一回目の自然分娩編に続き、連載2回目の今回は「無痛分娩」について教えていただきます。

 

産婦人科医でありながらご自身もママであるかおりさんだからこそ語れる出産を上手に乗り切るコツ、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

 

はじめに

出産を控えたママ達にまず伝えたいこと、それは妊娠、出産自体が「奇跡」なのだということ。

 

「こんな出産にしたい」という理想があることは私自身も出産経験者なのでとてもよくわかりますが、どんなお産の経過でも、無事であれば万々歳!!!

色々なお産をみてきたからこそ、心からそう思います。

 

私は先日3人目の出産を無事に終え、現在3姉妹のママなのですが、実は

1人目:自然分娩

2人目:無痛分娩

3人目:帝王切開(逆子のため)

と、3人とも違う方法で出産しております。

 

今回は産婦人科医としての意見に加え、出産を経験している立場から「出産のコツ」についてお話しさせていただきます。

 

少しでも皆さんの出産が良いものになったら嬉しいです。

 

 


阿部佳織

産婦人科専門医

 

2019年2月に長女出産。

2020年8月に次女出産。

2022年1月に三女を出産。

 

現在は一時的に休職し育児に専念中。

今後は産婦人科の情報も発信予定!

 

Instagram:@kaoria320


 

無痛分娩について

産道を通って赤ちゃんが出てくる経腟分娩の中で、陣痛の痛みを麻酔を使って緩和する分娩方法のことを「無痛分娩」と呼びます。

 

これは緩和しようとするプロセスを表す医学用語で、他にもよく耳にする「和痛分娩」「除痛分娩」は、医学用語ではありませんが同じことを意味します。

 

無痛分娩のやり方は施設によって異なるため、お産予定の施設がどの様な無痛分娩を行なっているのか事前に確認しておくことをおすすめします。

 

無痛分娩の方法

最も多いのは「硬膜外麻酔」、次に多いのが「脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔」

どちらも背中から注射をし、麻酔薬を注入していく方法です。

※背中からの注射ができない方(感染しやすい時、血液が固まりにくい状態のとき、脊椎の異常がある時など)は、点滴から鎮痛薬を入れる方法を行うこともあります。

 

  •  硬膜外麻酔

①妊婦さんは横になるか、座った姿勢になる。

 

②背中を消毒し、表面の痛みを取る局所麻酔の注射をする。

この針はとても細いですが、背中で見えないことと、細いといっても針を刺すので最初の一瞬は少し痛みます。でも、すぐに麻酔が効いて痛みはなくなります。

 

③表面の麻酔が効いたら、少し太い針を刺し、その針から細い管を入れ、硬膜外腔という狭いスペースに細い管を入れる。

 

④細い管から麻酔薬を少しずつ注入し、陣痛の痛みを感じにくくしていく。

横になる姿勢の場合、足を抱える様にして背中を丸めます。

座った姿勢の場合は、脱力して腰を後ろに突き出す様にして背中を丸めます。

 

この姿勢がポイントです!!この体勢が上手にできると、麻酔の管が背中に入りやすくなります。

 

ただ、お腹が大きいので、この姿勢は簡単ではありません。出来る限りで大丈夫なので、背中を丸めて背骨と背骨の間を広げるイメージで丸まりましょう

 

  • 脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔

硬膜外麻酔の前に、脊髄くも膜下腔に針を刺し、麻酔薬を入れる方法。

 

硬膜外麻酔も脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔も一旦麻酔が効くと、その後は妊婦さんが自分でボタンを押して投薬を調節していくことがあります。

 

無痛分娩のメリット

  • 何と言っても痛みが和らぐこと

無痛分娩がうまくいった場合は痛みが少なく、リラックスして出産することができます。

痛みが減ると分娩中の恐怖心が減るだけでなく、体の力が抜けることで呼吸も上手にでき、赤ちゃんへの酸素も届きやすくなります。

結果、お産もスムーズに進みます。

 

  • 体力を温存できるので産後の回復が早い
  • 麻酔が効いているため、会陰縫合時に痛みがない

麻酔は分娩後もしばらくは効いているため、分娩後に行う会陰縫合の痛みもありません。

 

自然分娩時の会陰縫合も局所麻酔を使用し痛くないこともありますが、痛みを訴えている方も多くいるので、これも一つメリットだと思います。

 

  • 緊急時帝王切開時に迅速な対応ができる

無痛分娩で使用している硬膜外麻酔の管で、緊急帝王切開に対応することができます。

 

 

無痛分娩のデメリット

  • 赤ちゃんが出てくるのに時間がかかることがある

・微弱陣痛・・・陣痛が弱くなってしまうことがあります。この場合子宮収縮促進薬を使用して対応します。

・回旋異常・・・赤ちゃんは回りながら出てきますが、それがうまくいかないことがあります。

・分娩第二期遷延・・・子宮の出口が全部開いてから赤ちゃんが出てくるまでを分娩第二期と言います。麻酔により踏ん張ることができないと、分娩第二期に時間がかかってしまうことがあります。(初産婦では1.5倍)

・機械分娩率上昇・・・上記3つにより、なかなか赤ちゃんが出てこられないときに、赤ちゃんを引っ張って出してあげることが必要になることがあります。(自然分娩に比べ、約10%上昇)

 

  • 一時的に赤ちゃんが苦しいサインを示すことがある

一時的に赤ちゃんが苦しいサインを示すことがあります。

無痛分娩開始10分〜30分後に起こることが多く、過強陣痛(子宮の収縮が強すぎる状態)を伴うことが多いです。

子宮収縮抑制薬が有効で、その後は正常な分娩経過をたどることが多いです。

 

  • 麻酔をする医療行為に伴う副作用や合併症

どんな医療行為にも副作用や合併症が可能性としてはあるので、そこまで不安に思う必要はありません。

 

良く起こる症状・・・一時的な足の多少の痺れ、尿がうまく出せない、軽度の低血圧、痒み

時々起こる症状・・・発熱、吐き気

やや稀に起こる症状(約1/100-300)・・・硬膜穿刺後頭痛、神経障害

極めて稀に起こる症状(約1/5万−10万)・・・アナフィラキシーショック、麻酔薬中毒、全脊髄くも膜下麻酔、重い神経障害

 

 

こういった副作用をいち早く発見し対応できるように、無痛分娩中は絶食で、妊婦さんの全身状態を把握できるモニターや赤ちゃんの心拍数・子宮の収縮を把握するモニターを常に着けながら行います。

 

麻酔開始時期はいつ?

  • 自然の陣痛発来に合わせて麻酔を開始する
  • 計画して無痛分娩を行う

この2パターンがありますが、施設によって様々なので確認してくださいね。

 

無痛分娩ができる人、できない人

無痛分娩は基本的に妊婦さんの希望で行られることが多いですが、医学的に無痛分娩が選択される時もあります。

  • 精神科疾患、循環器疾患、脳血管疾患を合併している方
  • 妊娠高血圧症候群の方

 

また、下記に当てはまる方は希望しても無痛分娩できない場合もあります。

  • 感染、出血傾向、心血管系、中枢神経系の病気の妊婦さんなど

※適応できるかどうかは医師の判断となりますので、持病をお持ちの方は必ず主治医の方とご相談して下さい。

 

無痛分娩は本当に痛くないの?

無痛分娩はプロセスを表す言葉のため、無痛分娩を選択したからといって必ずしも痛みがなくなるわけではありません。

 

うまくいく方もいれば、やっぱり痛かったという方がいるのも事実です。

何か変化があれば、その都度、助産師さんや医師に確認しましょう。

 

かおりさんの体験

自然分娩で産んだ1人目より、2人目の無痛分娩の方が回復はとても早かったです。

 

分娩中にも余裕があり、とてもリラックスして過ごせました。

会陰縫合も全く痛くなかったです。

 

無痛分娩は、赤ちゃんも痛くなくなるわけではありませんが、お母さんがリラックスできていれば、子宮の収縮に合わせてゆっくり呼吸でき、赤ちゃんに酸素を届けやすくなると思います。

お腹を触って硬くなっていたら、長い深呼吸をして、赤ちゃんに頑張れと声掛けしてあげてください。

 

皆さんのお産が素敵なものとなります様に。

 

 

出産のコツ連載第一弾【自然分娩編】はこちらから

この記事に関するキーワード

Kaori Abe

産婦人科専門医

Kaori Abe

産婦人科専門医

2019年2月に長女出産。
2020年8月に次女出産。
2022年1月に三女を出産。

現在は一時的に休職し育児に専念中。

今後は産婦人科の情報も発信予定!

Instagram:@kaoria320

UPDATE: