
【装花】人気フローリストに聞く、ふたりらしい世界観を叶えるウェディング装花のつくり方
by nana
今回は、結婚式の装花をオーダーする際のポイントについて、ARCH DAYS WEDDINGでもおなじみの人気フローリスト・伊藤裕之さんにお話を伺いました。
伊藤さんならではの感性と視点から、おふたりらしさを丁寧に表現するための工夫やアイディアをお届けします。
フローリストとの対話を大切にしながら、 “わたしたちらしい” 世界観を形にしていくためのヒントを、ぜひ参考にしてみてください。
プロに聞く。理想の世界観を叶える結婚式装花のポイント
おふたりの個性が息づく、特別な装花をオーダーしてみませんか?
結婚式の装花は、新郎新婦のおふたりの個性や想いを映し出す、大切な表現のひとつ。
丁寧に考えられた装花は、ゲストの記憶にも残る、印象的で心に残る空間をつくり出してくれます。
とはいえ、「私たちらしい装花って、どんなもの?」「どのようにオーダーすれば、思い描いた空間を実現できるの?」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ARCH DAYS WEDDINGでもたびたびご紹介している人気フローリスト・伊藤裕之さんに、装花オーダーのポイントを伺いました。
花嫁さまにとって役立つヒントが満載ですので、ぜひ最後までお楽しみください。
【プロフィール】
フローリスト 伊藤裕之(Hiroyuki Itou)
伊藤花店 -イトウハナミセ-(愛知県名古屋市西区)
結婚式・前撮りのブーケや会場装花をはじめ、イベントやディスプレイ、撮影における装花も手がける。
Instagram:@itou.flowers
フローリストとの対話で叶える、理想のウエディング装花
結婚式の装花のオーダーは、単なる注文ではなく、フローリストと共に創り上げるクリエイティブなプロセス。
その過程そのものが、おふたりにとって特別な思い出となるはずです。
いくつかのポイントを意識することで、フローリストの創造力と専門性を最大限に引き出し、想像を超えるような装花に出会える可能性が広がります。
「装花は、新郎新婦のおふたりの “好き” をかたちにし、その想いをゲストと共有するための空間を創り出すもの。さらに、それはゲストだけでなく、プランナーや会場スタッフ、フォトグラファーなど、結婚式に関わるすべてのクリエイターの心を動かす“ステージ”にもなるんです」と語る伊藤さん。
では、そんな理想の空間を実現するために、どのような準備をすればよいのでしょうか?
情報を共有することが、理想の第一歩
“ふたりらしさ” を表現した装花を叶えるためには、フローリストに必要な情報を丁寧に共有することが重要です。伝えた情報の一つひとつがデザインのヒントとなり、完成度を高める鍵になります。
伊藤さんは、装花デザインにおいて「0から1を生み出すのではなく、おふたりから受け取った“1”の情報を“100”に広げていくこと」を大切にされているそう。
必要とされる情報はフローリストによって異なりますが、打ち合わせがスムーズに進むよう、事前に以下のような内容を整理しておくと安心です。
・ ご職業やご専門分野、ご趣味、ご関心などのバックグラウンド
・ 性格や価値観といったパーソナリティ
・ 衣装やヘアメイク、アクセサリーの雰囲気
・ ご希望の雰囲気やテイスト、色味(色のトーンまで具体的に)
・ 季節感を取り入れるかどうか
・ 結婚式のテーマ
・ 当日の演出内容や特徴
・ 結婚式の形式(1次会・1.5次会など)やゲスト層(親族・ご友人・職場関係など)
・ 会場のスペック
・ テーブルクロス、ナプキン、椅子など会場装飾の色味やテイスト
伊藤さんが語る、装花デザインにおいて欠かせない情報とは?
(伊藤)「基本的な情報はすべて把握していますが、装花を考える際には、その中から取捨選択をして、おふたりにとって何が大切かを見極めるようにしています。特に重視しているのは、“衣装やヘアメイク”、“会場のスペック”、そしてお話した際に感じる“おふたりの印象や雰囲気”の3点。この3つは、私にとって装花をデザインする上で欠かせない要素です。」
主役をより一層引き立てる装花。衣装やヘアメイクとのバランスも重要 (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤) 「結婚式における主役は“おふたり”です。だからこそ、花はおふたりの魅力を引き立てる存在であるべきだと思っています。 “好き”やこだわりを丁寧に反映することで、その方らしい世界観が生まれ、ゲストの皆さまにも“らしさ”を感じていただける装花に仕上がるのです。」
フローリストとの打ち合わせに向けて準備しておきたいことは?
伊藤さんによる手描きスケッチ。装花イメージを視覚的に共有 (画像提供: @itou.flowers)
自分の「好き」を、言葉で表現できるようにしておく
(伊藤) 「自分の “好き” をきちんと言葉で伝えられるようにしておくことが、打ち合わせ成功の鍵になります。
実際には“好き”なものがあるのに、全部話してくださらない方が8割ほどいらっしゃるんです。『専門用語がわからない』『花の名前を知らない』と遠慮される方も多いのですが、むしろ“そのままの言葉”でお話しいただけるほうがありがたいです。
“好きな理由”も、自然な話し言葉で構いません。フローリストはプロですので、専門用語がなくても十分に伝わりますし、言葉の選び方や話し方から、その方の感性や世界観を感じ取ることができます。
内容そのものより、 “好き”を語るときの熱量や想いを知ることが大切です。その感情を受け取ることで、私たちも伝え方や提案の仕方をその方に合わせて工夫することができます。」
結婚式のコンセプトを美しく映し出す、感性あふれる装花 (画像提供: @itou.flowers)
「画像をたくさん集める」より「心から惹かれる数枚を」
(伊藤)「参考画像をたくさん集めるよりも、 “本当に心から好き”と思える数枚を選んでおくと、より効果的です。そのうえで、なぜそれが好きなのか、理由を言葉で説明できるようにしておくと、私たちもより深くイメージを共有できます。
たとえば『胡蝶蘭が好き』という場合には、『胡蝶蘭の持つエレガントな雰囲気に惹かれている』など、背景や理由まで伝えていただけると、理解が深まりやすくなります。
また、『オレンジ色が好き』というときには、『オレンジの持つ温かさでゲストをおもてなししたい』といったように、色に込めた想いも添えていただけると、装花にもその気持ちを反映しやすくなります。」
フローリスト伊藤さんの会場装花 (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「さらに、 “これは避けたい”というNGデザインがある場合は、できるだけ早めにお伝えいただくとスムーズです。ただし、 “好き”を丁寧に伝えることで、自然と避けたいスタイルは提案されなくなるものです。否定的な話よりも、前向きな “好き” をベースにやりとりすることで、お互いに心地よくコミュニケーションが取れるはずです。
NGが多すぎると提案の幅が狭まってしまう場合もありますので……ご予算に余裕があれば別ですが(笑)」
想いや背景まで伝えることで、装花はより豊かに (画像提供: @itou.flowers)
「ふたりらしさ」を追求するために さらに意識したい3つのポイント
01フローリストの創造性を信じる、柔軟な視点を持つこと
花材や色味、デザインを厳密に「限定」してしまうのではなく、フローリストにある程度の自由度をもたせることで、専門知識や感性を活かした新たな提案につながることもあります。
たとえば、思いもよらなかった花材が、アレンジや見せ方次第で驚くほど素敵に仕上がることも。
フウセントウワタが加わることで、より個性的でアートな印象に (画像提供: @itou.flowers)
個性的でアートな会場装花 (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「こちらの装花では、風船のようにふくらんだフォルムが特徴的な『フウセントウワタ』を使用しています。
以前はあまり使われることのなかった花材ですが、アンティークの調度品を好む芸術肌の新婦さんだったため、あえて個性的なフォルムの花材を選びました。生け方にも“グルーピング”という手法を取り入れ、新婦さんのアート感覚を表現しています。」
カーネーションに新鮮な魅力を吹き込む、アイディアと技術 (画像提供: @itou.flowers)
フローリスト伊藤さんの高砂装花 (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「こちらの装花では、意外性のあるカーネーションを使いました。ブライダル装花では頻繁に使われる花材ではないため、少し珍しいかもしれません。
新婦さんがとてもハッピーな雰囲気の方だったので、ナチュラル系ではなく、お祭りのような華やかさを演出するために、花をつなげて吊るすデザインにしています。ネオンブルーに染めた花や、星のような咲き方の花も組み合わせて、全体をユニークな世界観に仕上げました。」
サボテンにウッドチップも添えて (画像提供: @itou.flowers)
サボテンを使用したゲストテーブル (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「こちらの装花では、サボテンを使った装花をご提案しました。新郎新婦ともに夏が似合う雰囲気の方で、特に新郎さまはワイルドな印象の方でした。また、ゲストのドレスコードが“白”だったこともあり、白い花を使いたいと考えていたのですが、カスミソウやバラでは少し違うと感じて、ドライな質感のサボテンと白い花を組み合わせることにしました。
サボテンは結婚式ではあまり使われない花材ですが、おふたりの雰囲気にぴったりで、とても喜んでいただけました。
花材を限定せず、柔軟にフローリストの提案を受け入れることで、思いがけない『ふたりらしさ』に出会えるかもしれませんよ。」
02色味の「トーン」を意識した、具体的なイメージ共有を
同じ“赤”でも、明るい赤とワインレッドでは印象が大きく異なります。だからこそ、「トーン」のニュアンスを具体的に共有することが、理想のイメージに近づくための大切なポイントとなります。
トーンとゾーニングの工夫で、カラフルでも落ち着いた印象に (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「こちらの事例では、新婦さんのドレスに青と赤が使われていたため、装花にもその2色を取り入れました。ただ、青と赤は反対色のため、強い印象になりすぎないようニュアンスカラーでまとめています。おしゃれで落ち着いた雰囲気のおふたり、そして山奥の静かな会場という背景もふまえて、全体を“ダークトーン”で統一しました。
よく『たくさんの色を使うとごちゃごちゃしませんか?』とご質問いただきますが、色の“トーン”をそろえることで、多色使いでも落ち着いた印象に仕上がりす。また、 “ゾーニング”という考え方も大切で、青は青、赤は赤、といったように色のエリアを分けて配置することで、反対色でもまとまりのある印象になります。」
ラグの色ともリンクさせて、鮮やかな多色使いでもまとまりを (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「こちらは先ほどと同じ“青と赤”でも、鮮やかなトーンでまとめた事例です。印象がまったく異なりますよね。
このように、たとえば『ナチュラルな雰囲気にしたいので、柔らかいトーンで』といったトーンに関するニュアンスだけでも共有いただけると、フローリストとしても意図をくみ取った繊細なご提案がしやすくなります。」
03フードや小物などの“副素材”は、「その人らしさ」を映し出すために
果物や野菜、小物などを装花と組み合わせる演出は、近年のトレンドのひとつ。
ただし、単に流行を取り入れるのではなく、「なぜその素材を使うのか」という視点がとても重要です。
玉ねぎのピリッとした赤が、空間のアクセントに (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「この装花では、玉ねぎを取り入れています。“なぜ玉ねぎ?”と驚かれるかもしれませんが、新婦さんがとてもグルメな方だったため、彼女らしさを表す副素材として、食べ物を使いたいと考えました。苺などでは可愛らしくなり過ぎてしまうので、ちょっとスパイシーでユーモアのある印象の玉ねぎを選びました。」
新婦とぴったり重なった、蝶が舞う花園の世界観 (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「この装花では蝶の装飾も取り入れました。事前に拝見したペーパーアイテムが、ヨーロッパの花園を思わせるようなデザインで、とても印象的だったため、その世界観を装花でも表現しました。サプライズでご用意したのですが、当日、新婦さんがご自身で準備された席札にも偶然蝶のモチーフが使われていて、空間全体に統一感が生まれました。」
新婦の好きなものから紡ぎ出した装飾 (画像提供: @itou.flowers)
(伊藤)「別の事例になりますが、こちらは“季節感を大切にしたい”という新婦さんのご希望と、“オレンジ色がお好き”というお話を受けて、『収穫の秋』をテーマにおつくりした装花です。秋の実りを感じさせる果物や野菜などの副素材をあしらい、温かみのある彩りで、季節を感じられるようなコーディネートを意識しました。」
このように副素材は、あくまで “ふたりらしさ” や結婚式のテーマを表現するための手段。取り入れる際は、単にトレンドだから選ぶのではなく、「その素材が、ふたりのどんな魅力やテーマを伝えているのか」という視点を大切にしたいものですね。
ただし、食材を使用する場合は、会場によってはNGとなることもあり、またフローリスト側での準備が難しい場合も多いため、事前の確認が必要です。
おふたりらしさを表現する装花を、楽しみながらイメージしてみて (画像提供: @itou.flowers)
装花づくりの気づきを手がかりに、次回は“ふたりらしさ”が輝く実例をお届け
いかがでしたでしょうか?
伊藤さんのお話からは、おふたりらしい装花を叶えるためのヒントが、たくさん見つかりましたね。
「どんな空間にしたいか」「ゲストにどんな想いを届けたいか」。
そんな願いは、言葉にならないこともあるかもしれません。
それでも、フローリストとの対話を重ねることで、少しずつかたちになっていくはずです。
次回は、「【装花】編集部が厳選!人気フローリストが手がけた“ふたりらしさ”あふれるウェディング装花事例」をご紹介します。
おふたりの個性が光る素敵な実例をお届けしますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
▼伊藤さんが装飾した結婚式事例はこちら
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企業のブランディングを担う制作ディレクターやフォトブランドを展開。 年子男の子ママ。 ライターとしては、トレンドを意識した役立つ情報を発信していきます。
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